溺甘系朧咲夜【完】
私は、流夜くんが私の方を見てくれなければ淋しくて、今までは流夜くんが逢いに来てくれるのを待っているしか出来なくて、流夜くんに寄りかかっていないとそこにいられなかった。
でも、駄目なんだ、それでは。
流夜くんは抱えているモノが多く、大きい。
今の仕事を続ける以上、これからも抱えるモノはどんどん増えて行くんだろう。
人の命や罪と言う名の。
流夜くんの傍に――隣にいたいのなら、せめて自分でそこに立っていないといけないんだ。
……私は、そこにいたい。
流夜くんに寄りかかってじゃなくて、支えられてじゃなくて、私の力でそこにいるの。
その手を差し出してくれる限り、必ず私は自分の手を重ねて行きたいから。
「咲桜、帰ろう」
「うん」
手を繋いで、でも、自分の足で。
……私と流夜くんを繋ぐ糸は、辛く哀しいものだったのかもしれない。知らない方がよかったのかもしれない。
それを越えて、二人で、手を繋いで隣にいることを選んだの。