溺甘系朧咲夜【完】


「………」


「先生、言いたいことあるなら言ってください」


見られ過ぎ。恥ずかしいって、普通に。


「いや……」


それきり言葉を濁してそっぽを向いた先生は、「あとから行く」とふゆちゃんに答えていた。


ふゆちゃんと降渡さんを見送って、先生と在義父さんと三人で食卓を囲む。


これも結構日常な風景。


私の母親の桃子母さんは私が三つくらいの頃に亡くなっていて、在義父さんの両親も、在義父さんが大学生くらいで亡くなっているから、現在私と在義父さんの二人家族。


桃子母さんの両親がどうしているかは、私は知らない。


と言うのも、桃子母さんは行き倒れているところを在義父さんに保護されて、その上記憶喪失だった。


桃子って名前も、在義父さんがつけたんだって。


桃子母さんは、最後まで本当の名前もわからなくて、身寄りもない状態だった。


そんな桃子母さんを、在義父さんは、華取家の墓に横たえさせた。


正真正銘、自分の妻、華取桃子として。

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