溺甘系朧咲夜【完】

side咲桜



「せんせー、お弁当ですー」


昨日は慌ただしくて先生に渡すのを忘れていた。


生まれて間もなく家族を亡くしている先生の親代わりで、私の母親代わりでもある、在義父さんの後輩のマナさん――春芽愛子(かすが まなこ)さんをして、家事能力皆無と言われる先生なので、出来るだけお弁当を作って渡していた。


昨日渡し忘れた分を、今日は旧校舎にお届けだ。


「ああ、悪いな。手間かけて」


あれ、普通だ。


先生はいつも通り窓際の机で、パソコンを開いている(やっているのは仕事じゃなくて私事の方だからある意味不良教師だ、なんて言ったら、先生は笑って終わらせるだろうけど)。


「ああ咲桜。勉強見るって話だけど」


「あ、はい」


「今日は降渡も吹雪も華取の家には行かないって言ってたから、うちでもいいか?」


え。


先生のところってことは、先生のアパート。


ふ、二人きりでいいんですかっ⁉

< 24 / 137 >

この作品をシェア

pagetop