溺甘系朧咲夜【完】


「へ? 降渡さん? えーと、まずは足の甲を踏んづけてから下腹に拳入れて、ひるんだところを頭ホールドして顎を膝蹴りしますかねえ……?」


咄嗟に思いつく反応を言うと、先生はびくっとした。


「……恐ろしいヤツだな……」


「先生が聞いてきたんじゃないですかっ。大体絆さんがいる降渡さんがこんなことするわけないでしょうっ。不埒者は先生じゃないですかっ」


また先生がびくっとした。え、先生が怯えてるの?


絆さんというのは、降渡さんの彼女の諏訪山絆(すわやま きずな)さん。


先生の高校時代の一個先輩で、降渡さんとは同い年。


弁護士さんのたまごで、桜台法律事務所というところに所属している。


学生時代にちょっと先生とはいさかいがあったらしくて、絆さんははっきり言って先生がキライみたい。先生と顔を合わせれば喧嘩売ってばかり……。


でも先生はそういう、相手からどう見られているかとか気にしない人みたいで、喧嘩を売られてもさらっとかわしちゃって大事にはならない。


そう言えば先生が誰かを怒っているとか、喧嘩しているとことか見たことないな……。


さっきは誰に怒っているのではないって言っていたし、降渡さんや吹雪さんとの言い合いもじゃれているって感じだし。


仏か。

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