溺甘系朧咲夜【完】


私、もう物心ついた頃から先生が特別大すきな人で、抱き上げられようものなら頭爆発しそうだったし、バレンタインチョコは先生にあげたくて作ったものだ。


でもいざ先生を目の前にしたら先生がカッコ良すぎてクラクラしてきて、思わず放り出して逃げちゃったんだ……。


それなのに先生はホワイトデーのお返しをくれて。


それが可愛い包装のキャンディだったんだけど、大事にし過ぎて肌身離せず持ち歩いていたら、早く食べなさいって在義父さんに怒られたこともある。


それを知った先生は、毎年あげるから食べて大丈夫だよって諭してくれた。


……そのとき私は、『じゃあ毎年受け取ってくれますか?』なんて言っちゃって。


先生は笑って肯いてくれたけど、七歳と十六歳の間でどんな話してるんだよ、って今なら思う。


今なら。


今年私も十六歳になる、今なら。


「……今離したら今度こそ逃げられそうだから、離さない」


「にげ、ませんよ……。私―――」


叶うなら、ずっと傍に居たいんです。


とは、続けられなかった。


「わーっ! 神宮がついにやっちまったー‼」

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