溺甘系朧咲夜【完】
どうしてか、先生の声は震えて聞こえた。
先生の鈍感とトンチンカン具合に怒っていた気持ちが、その頼りなげな声音に、愛しさに変えられてしまった。
好きな人マジック。
「ほんと、ですよ……。いつからかは憶えてないくらい、ずっと前から……」
あ、やば。つられて私の声も震えてるし……。
「嘘だ、とか、あとから言わない?」
「言いませんっ。先生のこと好きだって昨日も言ったと思うんですけど、聞いてなかったんですか?――」
キーンコーン……
「ごめん、予鈴鳴ったな」
ふと、腕の力がゆるんだ。
なんとなく視線は下げたまま、言葉を探す。
「えと……教室、戻っていいですか……? 今なら間に合うので――」
「うん。続きは今日の夜、うちで。迎えに行くから、ちゃんと待ってろよ?」
先生の瞳は、今まで見たことないくらいキラッキラしていた。
……これって、少しは進展を期待してもいいのかな?
先生は昨日、私が先生のことを好きって知らない(気づいていない?)状態だから、彼氏ではないって言ったのかな……?
「咲桜」