溺甘系朧咲夜【完】
駄目だったらしい。
「本当のことなんだろ?」
「本当ですけどっ。いい加減自分に腹立ってきました」
何故か咲桜の顔には『悔しい』と書いてある。
「ほんと……私ばっかずっと好きで……他に好きな人も出来ないで……」
「他のヤツ好かれたら困るんだけど」
「なんでですか?――」
「咲桜は俺がいただく予定だから」
大袈裟ではなく、咲桜の肩が跳ねてこちらを振り仰いだ。
「えっ? い、いつそんな予定がっ」
「いつだろうなー」
「誤魔化さないでちゃんと言ってください!」
「ちゃんと自覚したのは昨日かな」
「直近じゃないですかっ! それまで私はなんだったんですか!」
「一番幸せになってほしい子」
「へ―――?」
ボケっとした顔の咲桜の、柔らかい髪先に触れる。