溺甘系朧咲夜【完】


駄目だったらしい。


「本当のことなんだろ?」


「本当ですけどっ。いい加減自分に腹立ってきました」


何故か咲桜の顔には『悔しい』と書いてある。


「ほんと……私ばっかずっと好きで……他に好きな人も出来ないで……」


「他のヤツ好かれたら困るんだけど」


「なんでですか?――」


「咲桜は俺がいただく予定だから」


大袈裟ではなく、咲桜の肩が跳ねてこちらを振り仰いだ。


「えっ? い、いつそんな予定がっ」


「いつだろうなー」


「誤魔化さないでちゃんと言ってください!」


「ちゃんと自覚したのは昨日かな」


「直近じゃないですかっ! それまで私はなんだったんですか!」


「一番幸せになってほしい子」


「へ―――?」


ボケっとした顔の咲桜の、柔らかい髪先に触れる。

< 42 / 137 >

この作品をシェア

pagetop