溺甘系朧咲夜【完】
「あ、はは。そうですよ、ね……」
「咲桜。最後まで聞いて」
拒絶されたと思ったのだろう。うつむいた咲桜の頬に手を当てて、上向かせる。
目元に涙がにじんでいた。
……だから自分に嫌気がさすんだ。
「他に好きな人がいるとか、そういうことは全然ない。口に出来ない理由も、俺の心情の問題ってだけで、年齢や職業の所為じゃない。……咲桜が卒業するまでには、片をつける。だからあと二年半、それを言葉にするのだけは待っていてほしい。すごく勝手で都合いいことを言ってるのはわかってる。ただ……本当に俺は、咲桜がいないと駄目なんだ」
咲桜が、いてくれないと――。
「……信じて、いいんですか? 卒業したら、教えてくれるんですか?」
咲桜の目元にたまっていた雫が流れる。
綺麗な線を描いて、咲桜のスカートに落ちた。
「うん。約束する。それから、咲桜を世界で一番幸せな花嫁にしてあげる。勿論、隣にいるのは俺で」
「~~~そこまで言ってくれるのに好きとだけ言ってくれないの、意味わかりません……」
「ごめん。でも、隣にいる未来を描いたの、咲桜とだけだから。妄想で終わらせたくないしな?」
「……先生、やっぱり昨日からおかしいです……」