溺甘系朧咲夜【完】


「人間らしくって降渡さん……今日もお箸の買い置きしなきゃですよ」


「でもそれって、咲桜ちゃんがりゅうに『家の中ではいちゃつかないで』って言えば済む話じゃない? 咲桜ちゃんとりゅうが付き合うことは在義さん認めてるんだし、目の前のいちゃつかれてるのに機嫌悪くしてるだけでしょ?」


「う……そうかもしれませんがー。言えません」


「なんで?」


「なんでもです」


トレイを抱きしめて、カウンターの中に戻る。


確かにそう言えば在義父さんの破壊行動は収まるかもしれないけど……。


「娘(じょう)ちゃん、五番」


「あっ、はい」


龍生さんに呼ばれて、受け取ったお皿をトレイに乗せる。


龍生さんは、見た目文系で中身超体育家系な在義父さんと違って、明らかに強そうな筋骨隆々とした見た目で、中身は穏やか。


そして――


「親父―。こっち出来たー」


「おう」


もうすぐ、遙音先輩のお父さんになる人。

< 56 / 137 >

この作品をシェア

pagetop