溺甘系朧咲夜【完】


マグカップを二つ手にして部屋に戻ると、咲桜は机に突っ伏して伸びていた。


「咲桜―。紅茶―」


「あ、ありがとうございます~」


ヨロヨロと顔をあげる。頼むからこれで少しでも回復してくれ。


ミルクティーを咲桜の前に、自分の分はコーヒーを置く。


「あったかいです~」


「足元はあたたかく、頭は冷静に。勉強する時の効率な」


頭寒足熱(ずかんそくねつ)というやつだ。


冬場、部屋をあたためているときの注意点。


暖房なんかで部屋全体をあたためると、頭まで熱くなる。そうすると頭がのぼせた状態になって頭の動きが鈍くなる。


出来たらブランケットやヒーターで足元をあたためて、頭は落ち着いた状態で勉強するのが、内容も入ってきやすい。


「は~。生き返る~」


お前は勉強で死にかけていたのか。


そうツッコむ代わりに、鞄に突っ込んであったものを取り出す。


「咲桜。一人で勉強するときの。新しいの持って来た」


「へ?」

< 71 / 137 >

この作品をシェア

pagetop