溺甘系朧咲夜【完】
マグカップを二つ手にして部屋に戻ると、咲桜は机に突っ伏して伸びていた。
「咲桜―。紅茶―」
「あ、ありがとうございます~」
ヨロヨロと顔をあげる。頼むからこれで少しでも回復してくれ。
ミルクティーを咲桜の前に、自分の分はコーヒーを置く。
「あったかいです~」
「足元はあたたかく、頭は冷静に。勉強する時の効率な」
頭寒足熱(ずかんそくねつ)というやつだ。
冬場、部屋をあたためているときの注意点。
暖房なんかで部屋全体をあたためると、頭まで熱くなる。そうすると頭がのぼせた状態になって頭の動きが鈍くなる。
出来たらブランケットやヒーターで足元をあたためて、頭は落ち着いた状態で勉強するのが、内容も入ってきやすい。
「は~。生き返る~」
お前は勉強で死にかけていたのか。
そうツッコむ代わりに、鞄に突っ込んであったものを取り出す。
「咲桜。一人で勉強するときの。新しいの持って来た」
「へ?」