溺甘系朧咲夜【完】
午後五時。急に呼び出しがかかった。
……事件は時節を選ばない。
「最後まで見られなくて悪い」
「いえ、ほぼ一日付き合ってもらいましたし。あとは新しいCD聴いてがんばります」
「ん。在義さんも帰れるかわからないけど、メシはちゃんと食べろよ? 休憩もちゃんと取ること」
「はい」
「睡眠時間も確保する。寝るときは布団で。机で寝落ちはやめておけ」
「はい。大丈夫です、そのあたりはずっと守ってますから」
「ん。じゃあ、またな」
「ありがとうございました。次はご飯、食べて行ってくださいね」
「腹空かせてくるよ。俺が出たら全部、鍵かけろよ?」
「了解です」
「あと、寝るときは布団で。これも絶対な?」
「わかりました。って言うか、そんな何回も言わなくても」
「咲桜は無理し過ぎるとこあるから。――じゃな」
見送ってくれる咲桜に軽く手を振って、華取の家を出る。
――いつ、気づくだろうか。
自分にしては子供っぽいことしたな、とは思うけど。
何度も念を押したから今日中には気づいてくれるとも思うけど。
枕の下に隠した、お守りに。