甘くて、苦くて
村井晴人君を好きになったのは、
高校3年生になってすぐ。
松本若菜、私の出席番号の後ろが
村井君だったから、
後ろの席の、
顔と名前は知ってるクラスメイトだった。
今まで同じクラスになったことはなく、
お喋りな感じではない人だったから、
話したことはほとんどなかった。
あの日。まだ夕方だったのに、
酔っ払いのおじさんに駅で絡まれて
困っていた私を助けてくれたのは村井君だった。
かっこいい助け方だった訳じゃない。
ただ、駅員さんを呼んできてくれただけ。
それだけなのに、
次の日から後ろの席の村井君が
気になって仕方なかった。
何回も何回も迷って、
クラスのグループラインから
村井君を友達追加して、
ラインを送った。
返事が来るまで、すごくドキドキしていた。
20分後に来た返事も、すぐに既読しないで、
でも、はやく返したくて、5分後に既読をつけた。
めんどくさい女だって、自分でもわかってた。