STAR
運命の人

「ありえないーー!!」

狭い部屋で私の叫び声が響いてる。
元也(もとなり)こと私の彼氏であるもっちゃんは、宙を飛ぶクッションを見事に避けた。避け方が上手くてなぜか悔しいっ!

「うーん……ごめん……」
ボソッとつぶやかれたけど
私のショックは大きすぎて、謝罪の声は怒りに飲み込まれて終わる。

「もう……もうもうもうもうーーー」
牛のようにモウモウ言うしかない。
いっそ牛になり美味しいミルクを絞り出し、最上級のケーキを作り出したいっ!って自分で何を言ってるのかワケわからなくなってきた。

「来週締切だと思って……」

「絶対大丈夫で『俺にまかせろ』言ってたじゃん!」

「うーん……うん」

「クリスマスにケーキがないなんて最低!」

私の彼氏であるもっちゃんは
あれだけ私がしつこく頼んでいた、お気に入りのケーキ屋さんのクリスマスケーキの予約を忘れていた。
限定30個。

この春に、もっちゃんの職場の近くにオープンした小さなケーキ屋さん。会社帰りに買って来てくれたのをきっかけに、私たちはそのケーキの美味しさに惚れ込んだ。もしクリスマスケーキの予約ができるなら、絶対絶対ここのケーキを予約してふたりで食べようねって、夏から約束してた。そして2週間前に限定30個で予約受付るってもっちゃんから教えてもらって、嬉しくて嬉しくてふたりで過ごすお家クリスマスをすんごく楽しみにしてたのにー。



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