好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
「返せよ……指紋がつく」

俺は立ち上がって、ほのかが握る写真集を奪う。

ほのかもアイドルになったら、こんなことするのか……?

一瞬水着で砂浜に寝そべるあいつを思い浮かべそうになったが、そのイメージを振り払って写真集を本棚に突っ込んだ。



「潔癖症だね、蒼は……」

「お前は幼児体系だから心配することねぇよ」

「何それ……最低」

あいつが本当に幼児体系なのか知らない。

適当にそう言った俺に、あいつは少しふくれてるように見えた。



「そう言えばさ……オーディション応募しといた」

これ以上彼女を怒らせないように、さり気なく話題を変えた。



「本当に応募したの?」

ほのかは少し驚いた顔をしていた。

「うん、応募した……」

彼女は、そこまで本気でアイドルを目指していた訳じゃないのだろうか。

少し悪いことをした気になった俺に、「あたしが受かる訳ないよね」とあいつは苦笑いした。
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