好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
ほのかのレーンには、一番長い行列ができていた。

俺は男ばかりが並んでいる行列の一番後ろについた。

まだ握手会の開始時刻にはなっていないが、俺はリュックから握手券を取り出した。



握手会が始まりゆっくり行列が進む間、俺はずっと握手券を握りしめていた。

握手会に来るのは二回目で、いつもの雰囲気はわからないが、ほのかのレーンは殺気立っている感じがした。



仲間うちでほのかについて語り合うファンのグループ。

一人でイラついた様子で立っている中年男性。

ほのかと同年代の女子学生グループだけは周りの空気を気にせず楽しそうに盛り上がっていた。



個別で握手をするスペースは、白いついたてで仕切られていて外からは見えないようになっている。

ほのかは、どんな顔で握手しているのだろう。

ほのかの姿が見える訳ではないけれど、俺は視界を遮る白いついたてを遠くから見ていた。
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