好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
俺は朝食をとって、しばらくしてから家を出た。

あいつの家は近所にあって、ゆっくり歩いても五分はかからない。

俺はスマホだけポケットに突っ込んで歩いていた。



あいつの家を訪ねるのは何年ぶりだろう。

幼い頃何度も通った家を間違えるはずはないが、弓槻と書かれた表札を確認してからインターホンを鳴らした。



「蒼君、久しぶり。また大きくなったわね」

ほのかの母親は、すぐに玄関のドアを開けた。

ほのかとよく似ていて若い頃は美人だったと思うが、性格はほのかとは正反対だった。



「あの……ほのかさんは……」

保育園の頃は『ほのちゃん』と呼んでた気もするが、この年齢でそう呼ぶのも恥ずかしいし、『ほのか』と呼び捨てにするのも何様だと思われそうで、『ほのかさん』と呼んだ。
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