好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
「これ……蒼に渡したくて……」

俺は「ありがとう」とつぶやいて、それを受け取った。



「あたし、蒼にちゃんとお礼言いたかった。あたしが変わるきっかけをくれたのは蒼だから……」

俺たちは、少し距離をあけて向き合っていた。

俺は、その距離をつめようとはしなかった。



「あたし、自分のこと好きになりたかった。もっと自信が持てるようになりたかった」

ほのかは、そう言って目を伏せた。



「あたし、みんなが憧れるアイドルになりたい。見てる人が、幸せになれるようなアイドルになりたい」

ほのかは大きくまばたきしてから、まっすぐ俺に視線を向けた。



「このまま、中途半端な自分で終わりたくないの」

夜の静寂が、俺たちを包んでいる。

あいつは、泣きそうな顔をしていた。
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