好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
あいつとの初めてのキスは、涙の味がした。

一瞬柔らかな感触が触れただけで、その感触よりも大きな瞳からこぼれる涙のほうが強く胸に刻まれていた。



もしかしたら、最初で最後のキスだったのかもしれない。

あいつを強く抱きしめて、もう一度キスできなかった自分を男として情けなく思っていた。



あれは、ほのかの決意の表れだろうか。

あいつは、もっと臆病なやつだと思っていた。



あいつからもらったチケットは、大切にリュックにしまい込んだ。

アイドルグループのライブに参戦するのは、今回が初めてだ。

snow mistにとっても、これがグループ初のワンマンライブだった。



俺は緊張しながら、少し早めに会場に向かった。
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