好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
彼女が笑わなくなったのはいつからだろう。

ショートヘアだった彼女は活発で負けん気が強くて、どちらかというと少年みたいだった。

俺と一緒に走り回って、いたずらばかりしていた幼い頃とは別人のようだ。

彼女は綺麗になりすぎた。
細長い手足にあの顔じゃ、どこにいても目だってしまう。

それが気に入らないのか、クラスの女子は陰でこそこそ悪口を言っては、嫌なものを見るような視線を送る。

あいつは強い。泣いたり弱音をはいたりしない。

もう少し頼ってくれてもいいのに……
彼女は心を閉ざしたまま、寂しそうにうつむく。

そんな憂いをおびた表情もすごく綺麗だった。
思わず隠し撮りしてしまった写真をこっそり開く。

我ながらよく撮れている。

『必ず10万とってこいよ』とあいつに言ったが、お金が欲しいわけじゃない。

ただあいつの笑顔が見たかった。

自信なさそうにうつむく姿じゃなく、無邪気に笑う顔が見たい。

少しでも自信を持ってほしい。

あいつが変わるきっかけになれば……
俺はそう願って、この写真を送った。
< 3 / 210 >

この作品をシェア

pagetop