好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
信じられない……

この10万で大人買いしようかと思ったけど、恥ずかしくて1枚しかかえなかったCDを、家に帰ってからまじまじと眺める。

真っ白な背景に制服姿で並ぶ黒髪の美少女たち。
その真ん中で、あいつははにかんだ笑顔を見せていた。



何照れてんだよ……
満面の笑みを見せないあいつに心の中で突っ込む。

初めての撮影で緊張したのだろうか。
その照れた笑顔が初々しくて可愛い。

俺は思わずふっと笑ってCDを開く。
CDを取り出そうとしたら、中から白い紙が落ちてきた。



握手券……?

なんだこれ、アイドル初心者の俺には使い方がわからない。
これを持っていけば、あいつと握手できるのか?

金払って握手するなんて馬鹿馬鹿しい。
俺はその紙を破り捨てようとした。



そういえば、あいつの手握ったことあったっけ?
あいつ、初めての握手会でどんな顔してるんだろう。

俺以外の男が、俺より先に手を握るなんて許せない。

俺が一番乗りになってやる。

俺は握手券と金が入った封筒を握りしめ、部屋を飛び出した。
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