好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
大きな瞳をカメラに向けて笑顔を作っていたけれど、その顔はどこか寂しそうに見えた。

あいつはもう東京での生活に慣れたのだろうか。



芸能界のことはよくわからないけれど、テレビでアイドルのオーディション番組やドキュメンタリーを観ていると、まだ初々しい女の子が業界人から厳しいことを言われてよく泣いていた。

ほのかも泣いているのだろうか。



今日のほのかは、どんな顔をしているだろう。

初めての握手会で緊張しているだろうか。

あいつの保護者でもないのに、余計なことを心配してしまう。

自分は過保護な幼なじみだと苦笑いしてしまった。
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