好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
『あの、そうですね……
今回、恭平さんと初めてキスシーンに挑戦させていただいて……』

ほのかは、恥ずかしそうにうつむきながら話している。



ほのかがキスシーン……?
どういうことだ?

まさか、このイケメン俳優と本当にキスしたのか?



『撮影の前すごく緊張してしまって……
その時に、自然体のあたしでいいよって励ましてくださって……本当に感謝してます……』

マジかよ……
ふざけんなよ。

誰か嘘だと言ってくれ。



ほのかと握手するために、わざわざ東京まで行った俺の立場はどうなる?

俺は金払って並ばないとほのかと握手できないのに、このイケメン俳優は仕事とはいえ、あっさりほのかとキスしてしまったのか……



ほのかはファーストキスだったんじゃないのか。

あいつのファーストキス返せよ……



俺は、ほのかの隣で微笑むイケメン俳優を一発ぶん殴りたい気持ちを抑えて、一気にコーヒーを飲み干した。
< 50 / 210 >

この作品をシェア

pagetop