好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
笹川の言葉で少し期待してしまったが、あいつから連絡が来ないまま数カ月過ぎてしまった。

もう俺のことなど、完全に忘れてしまっているだろう。



仕事が忙しいのかもしれない。

アイドルグループのセンターにやりがいを感じているのかもしれない。



東京で新しい仲間ができて、楽しくやっているのかもしれない。

一ノ瀬恭平のようなイケメン芸能人や仕事ができる大人の業界人に囲まれて、誰か好きな男でもできたのかもしれない。

俺は、あいつから連絡が来なくなった原因を考えていた。



毎日が充実しているのならいいが、ほのかは何でも一人で抱えこむ性格だった。

簡単に『辛い』とか『助けてほしい』とは言ってこない。

もしかしたら、誰にも相談できず一人で悩んでいるのかもしれない。



毎日会っていれば微かな変化に気づけるが、テレビを通して見ていても彼女が何を考えているのかよくわからない。

俺は、遠く離れた幼なじみが心配だった。
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