好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
「俺、まだスカイツリー行ったことなくてさ……
東京のことよくわかんねぇし、ほのか案内してくれない?」

「あたしも行ったことないから、よくわかんないよ」

ほのかに会えるなら、場所はどこでもいい。

俺は、ほのかに会う口実が欲しかった。



スカイツリーが駄目なら、他の場所を提案しようかと思ったが、そういう問題ではなく、ほのかは俺に会うことを拒絶している感じがした。



「ほのか……会いたい」

回りくどいことを言っても仕方がない。

俺は、ストレートに自分の気持ちを口にした。



ほのかは、何も答えてはくれない。

迷惑なことを言ってしまったのだろうか。



「ごめん……会えない」

しばらく間を置いてから、彼女は低くつぶやく。

俺はまだ話を続けようと思ったが、一方的に電話は切られてしまった。
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