ドラマチックな恋は、突然に。
うつむき加減でマロンちゃんを膝に乗せて毛並みを撫でる彼に、改めて優しそうないい子だなと感じる。

「……あんな風に女の人を誘ったこともなくて、内心はドキドキだったんです」

口にする彼に、

「私も、誘われてドキドキだったし」

応えて、どちらからともなく笑い合った。

自販機で飲み物を買ってきて、そんな他愛もない話をする。

「マロンを志穂さんが助けてくれた時には、本当にかっこいいヒーローみたいにも思えて」

「ヒーローって、」と、つい吹き出す。

「…あっ、ヒーローじゃないですよね。やっぱりヒロインってことで」

ヒロインだなんて言い直されて、

「ヒロインとかそんな柄でもないから」

と、手を振って否定をする。

「いえ、ほんとに。僕にとっては、ヒロインで」

ふと見つめられて、

「……そんなことないから」

と、ちょっと気恥ずかしくもなる顔をそむけた。

公園のベンチで、缶を飲みながら喋ってるだけなのに、彼との時間は楽しくて、次に会えるのはいつだろうと待ち遠しくもなるみたいだったーー。

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