ドラマチックな恋は、突然に。
「そうなんですね…」

頷く光希くんを見ながら、曖昧にしたところで10歳以上も離れてることはごまかしようもないんだしと思ったら、言ってしまったことにやっぱりちょっと落ち込んでもくるみたいだった。

さすがにそんなに年の差があったら恋なんて……と、そこまで思って、自分は彼と一体どうしようとしてたんだろうと感じた。

「……僕は、年齢とか気にしないですから」

私の考えてることを悟ったらしい彼が口にする。

「…うん、ありがとう……」

返して、「でも、いいの…」笑って言う。

そう……私には今までの生活を捨てて、若い光希くんと一緒にいたいと思える程、無謀になんてなれなかった。

気持ちだけで突っ走っても、どうしたって先が見えてしまう。今になって何もかもを投げ出せる程、恋に全ても賭けられなかった。

土壇場でこんなことを考えてる自分は、そんなところばっかり年を食ってしまったみたいで、狡いな……と、思う。

だけど、彼にはまだ他にいい人と出会えるチャンスは、この先もいっぱいあるはずだった。

だからもう……「ごめんね……光希くん」ベンチから立ち上がる。

「……志穂さん!」

呼び止められたけれど、振り返らずに走った……。

私なんかじゃなくても、いいよね……ごめんね。さよなら

心の中で別れを告げて、私は彼の元を離れることしかできなかったーー。


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