ドラマチックな恋は、突然に。
走ってる時には気づかなかったけれど、すごくカッコいい人……と呆然とその顔を見つめる。

「……あの、リードを渡してもらってもいいですか?」

言われて、「あ…ああ、ごめんなさい! つい見とれて……」と、よけいなことまで口に出して、

「……見とれてって、僕にですか?」

と、クスリと笑われた。

「…ご、ごめんなさい……」

爽やかな笑顔に、恥ずかしさがつのりもう一度小さく謝る。

「……いえ、謝らないでください」

私よりだいぶ若いだろう彼はそう言って、

「マロンを捕まえてくれてありがとうございます」と、丁寧に頭を下げた。

「いいえ、そんな…」慌てたように手を振って、「マロンちゃんって言うんですね」と、その愛らしい名前に笑みがこぼれた。

「ええ、ポメラニアンのマロンです。色が栗色だから、マロン……そのままなんです」

そう話して、屈託なく笑う彼についまた目が奪われそうにもなる。

(見た目だけじゃなくて、性格も良さそうなイイ子だな)

そんな風にも思っていたら、

「あの、よかったらお礼にコーヒーでも奢らせてもらえませんか?」

と、提案をされた。

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