ドラマチックな恋は、突然に。
「この近くにドッグカフェがあるんで、そこに行きませんか」

リードを引いて先に歩き出した彼に、そこで帰るわけにもいかなくてついて行く。

……向かい合って、カフェのテラス席に座り、まじまじとその顔を眺めた。

(ほんとカッコいいんだけど……)

本物のイケメンになんて、ドラマの中とか以外じゃ初めて会ったかもしれない。

感心しきりでいると、イスの下でもふもふとしたしっぽが足に触った。

下を覗くと、マロンちゃんがおとなしくお座りをして犬用のデザートを食べていた。

「お行儀いいんですね?」

こんなによくしつけができてるなんて、彼自身もしっかりした人なんじゃないかと思う。

「いえ、まぁ…」と彼は軽く応えて、

「あの、名前を教えてもらってもいいですか?」

と、訊いてきた。

「名前…ですか」

言ってもいいものかとためらう。

「ああ、いきなり名前を聞くなんてぶしつけですよね、ごめんなさい」

謝られて、「ああいえ」と首を左右に振る。

「僕は、瀬戸 光希(せと みつき)と言います。もしよかったら、またここでマロンの散歩に付き合ってもらえないかと思って…ダメですか?」

上目遣いな眼差しに、そんな仔犬みたいな目で見つめないでよと感じる。

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