制服を着て、空を見上げて歩いた。
このルートには、人の気配が一切しない。
だからお気に入りだったのだろう。
…滅多に2度は来ないから。
「あれ…?」
昨日は上を向いて歩いていたから気づかなかったのか、もう1本、枝分かれした細い道があることに気がついた。
「今日はこっち行こうかな」
私はその細い道を選び進んで行く。
もっと空気の新鮮さを感じることのできるその道は、私が忘れかけていた感情を揺さぶる。
…いつのまにか、音楽すら聞こえなくなっていた。
この世への不満を歌ったロックミュージックは "今" のわたしには必要なかった。
聞こえない音楽を切り離すようにヘッドホンを外す。
「わあ…っ」
たどり着いたのは街を見下ろすことのできる…崖と言うと少し大袈裟な、そんな所だ。
初めてみるその景色は儚げで、切なくて、…なのにとても綺麗だった。