制服を着て、空を見上げて歩いた。


彼はまた街を見る。



あそこの会社が〜

あ、そうそうここの家ね〜

お!俺の近所のスーパー



と独り言をボヤきながら。…でもその言葉の一つ一つのトーンはバラバラで、今日も何か悩んでここに来てるんだなと思い知らされる。

「ねえ」

「?」

「そろそろ名前、教えてくれないの?」

「ああ」

今思い出したように手をパーにしてその上に反対の手をグーにしてポンと乗せると彼はまたフフッと笑う。

「…よく笑うんですね」

「んー、そうかなあ、人によるけど」

「永和です」

…だから最初あんなに低いドスの効いたような声を出してたのか。

また少しおかしく笑う。

感情の渦の中に私がいるのは何年振りだろうか。

「言うタイミング謎なんだね」

「分かり易かったほうがいいですか?」

「敬語やめてよ」

彼はわかりやすく眉を落とすと私に向けて少しまた笑う。

< 18 / 28 >

この作品をシェア

pagetop