制服を着て、空を見上げて歩いた。
彼はまた街を見る。
あそこの会社が〜
あ、そうそうここの家ね〜
お!俺の近所のスーパー
と独り言をボヤきながら。…でもその言葉の一つ一つのトーンはバラバラで、今日も何か悩んでここに来てるんだなと思い知らされる。
「ねえ」
「?」
「そろそろ名前、教えてくれないの?」
「ああ」
今思い出したように手をパーにしてその上に反対の手をグーにしてポンと乗せると彼はまたフフッと笑う。
「…よく笑うんですね」
「んー、そうかなあ、人によるけど」
「永和です」
…だから最初あんなに低いドスの効いたような声を出してたのか。
また少しおかしく笑う。
感情の渦の中に私がいるのは何年振りだろうか。
「言うタイミング謎なんだね」
「分かり易かったほうがいいですか?」
「敬語やめてよ」
彼はわかりやすく眉を落とすと私に向けて少しまた笑う。