制服を着て、空を見上げて歩いた。
その時タイミングがいいのか悪いのか、私のケータイが音をならせて光る。
『父』と表示されたその画面を見て放置していると真横の彼は私を見て首を傾けた。
「出ないの?」
「…出ない」
私が困ったように眉を垂らせると彼は同じ表情を私に向ける。
…そんな顔が見たいんじゃないんだけどな。
「やっぱり出る」
私は決心したように少し離れて通話ボタンを押す。
「何」
『おお〜永和、今日は帰れそうなんだ、お母さんにも言っておいてくれ』
…その言葉に、嫌な汗が流れた。
父が帰ってくるのはとても久しぶり。母が覚えている保証はない。
…そして何より怖いのが。
「えっとじゃあ、私は今日…帰らないから、由…お兄ちゃんに言って。それと私の話題を一切出さないで」
私の存在がバレてしまうことだった。