打って、守って、恋して。
お店に滞在していたのは、二時間もなかった。
食事もとっても美味しかったし、念願の森伊蔵を飲んで満足もしたのだけれど、ちょっとお店自体が小洒落ていて居心地が良かったかと言われると、少し微妙なところだった。
この一般庶民の感覚を藤澤さんに話すべきか迷っていたら、お店を出てすぐに彼の方が
「なんか、思ってたよりもパッとしないお店だったような気がするのは俺だけですか?」
と苦笑しながら肩をすくめた。
「普段あーいうお店にあまり行かないので、あまり落ち着かなかったです。石森さんは女性だからあんな感じのお店とか好きそうですけど」
「いや!私も行かないですよ!藤澤さんがいつもそういうお店に行くのかと……」
「行かないですよ!森伊蔵を出してくれるお店を探したら、たまたま見つけただけです」
ものすごく焦った顔でそう言うので、この自分の感覚が彼と同じだったと分かってホッとしたのと、「森伊蔵」がどれだけ私たちを繋いでくれていたんだろうって笑ってしまった。
そしてその「森伊蔵」を実際に飲んでしまった今、もう私と彼を繋ぐものは何もない。
そう思ったらこのまま帰るのはもったいない気がして、彼を引き留めようか迷った。
すると、それより先に彼がなにかを探すように見回しながら私を手招きした。
「ラーメンでも食べに行きませんか?俺、まだまだ食べれそうなんですけど」
「ラーメン!?」
誘ってくれたのは嬉しいけど、まさかラーメンとは!
「さすがにラーメンはちょっと、入らないかも」
「……すみません。ですよね」
「あっ、じゃあパフェは?」
「パフェ!?」