打って、守って、恋して。
そんな中、とりあえず乾かしてもいない髪の毛にドライヤーをあてる。ブローなんてものはせずに手ぐしで適当に乾かした。
この時点で時間はかなりかかっている。
藤澤さんの家がどこかは知らないが、この前二人で飲んだ時にも送ってくれたのだからそんなに遠くはなさそうだ。
ますます気持ちが焦る。
キャミソールしか着ていない上半身をなんとかしなくては!とクローゼットから薄手の半袖パーカーを出して羽織り、みっともない脚をさらしたショートパンツもデニムかなんかに着替えようとバタバタしていたら、ピンポーンという電子音が部屋に鳴り響いた。
まさかもう!?
狭い部屋を走って玄関に行くと、そこにいたのはやはり藤澤さんだった。スーツ姿で立っている。
「こんばんは」
「こんばんは」
ドアをほっそーーーく開けて、隙間から見える彼と挨拶を交わす。
結局、どすっぴんに加えてほぼ部屋着のまま。できたのは髪を乾かしたことだけ。
「……なんか、すみません。無理言って」
あまりにも私がドアを開けないので、藤澤さんはものすごく申し訳なさそうに頭を下げていた。
そういう顔をされると罪悪感が募ってしまう。
せっかくお土産を買ってきてくれたのに。
……いや冷静に考えたら、わざわざ私にお土産を用意してくれたのだってありがたすぎて恐縮してしまう。
「すっぴんですよ?」
「はい」
「二十六歳のすっぴんはけっこうなもんですよ?」
「……あれ?もしかして同い年だったんですか?」
ここでそんなことを言うから、気が抜けてしまう。
もういいや、とドアを大きく開いた。
「同じですよ、歳。言ってませんでしたっけ?」
「たぶん聞いてないですね。……あ、これ」
私の顔を見てもこれといったリアクションはなく、彼は手に持っていた紙袋を渡してきた。
紙袋には「カマンベールチーズスフレ」と書いてある。なるほど、これはたしかに賞味期限は持たなそう。