打って、守って、恋して。
キラリと意地悪そうに淡口さんが笑うのが見えて、ちょっと嫌な予感。
ひょいと私の手からルールブックを取り上げると、沙夜さんと一緒にパラパラとめくりながら読み始めた。
「では問題」と、淡口さんの言葉に合わせて沙夜さんが「じゃじゃん!」とクイズ番組さながらの効果音を口にする。
なにこの茶番。
「センターとレフトの間をなんという?」
「……え!?」
そんなの書いてあった?
慌てふためいていると、「左中間!」とさっさと翔くんが答えてしまった。
満足げに淡口さんが「正解!」と指さす。
まったくついていけない。
「さ、左中間って何!?」
「次、問題!」「じゃじゃん!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!不利!まだ勉強中なんですから!」
「待ったはなしっすよ!負けた方が缶コーヒー買う!いいですね?」
「それ明らかに翔くんに有利でしょ!」
「ピッチャーが投げた球が打者に当たってしまうのをデッドボールと言いますが、では、ピッチャーが投げた球をキャッチャーのミスで後方へ逸らしてしまうことをなんと言う?」
「淡口さんひどい!わざと難しい問題出してる!」
「ルールブックに載ってること言ってるだけだぞー?」
「はいはい!パスボール!」
「正解!」「ぴんぽーん!」
わいわいと野球のルールクイズで盛り上がり、結局みんなの缶コーヒーを買いに外へ走ったのは……当然ながら、私だった。
ハメられたような気がする、というか、確信犯。
みんなひどい。
まだまだ勉強が必要だな、と息をついたのだった。