打って、守って、恋して。


しかと例のルールブックを手に握りしめ、私は中学時代に野球部の応援に来て以来、足を踏み入れることのなかった球場に来ていた。

あれからだいぶ野球のルールについてはひと通り学んだものの、実戦をこの目でちゃんと見るのは初めてだ。
凛子に言われて休みの日にプロ野球のテレビ中継を二度ほど見たのだが、ちんぷんかんぷんとまではならなかったので、おそらくかなりいい感じではなかろうか。


「柑奈もさ、受験勉強じゃないんだからそんな付箋とかつけなくたって…」

「何言ってるの!みんなと喜ぶタイミングとか、ため息つくタイミングずれたくない!」

「え、そこ?そのため?」

びっしり付箋紙まで貼りつけて野球と向き合ったこの二週間の努力を見てほしくて、凛子にドヤ顔で微笑んだ。微笑まれた方は引いてるみたいだけど。

肩にかけていた大きなバッグから、凛子は青い帽子と青いメガホンを取り出して私に「これ使って」と渡してきた。
早速帽子をかぶりメガホンは両手に持つと、これを鳴らして応援するのね!と、なんだかワクワクしてきてしまった。


周りを見ると、さすが栗原さんの登板日とあって観戦者が多い。特に女性。もちろん男性もいるけれど、半分くらいは女性だ。
野球観戦って男性が圧倒的に多いのかと思っていたけれど、最近はそうでもないと凛子が話していた。

この間翔くんに見せてもらった栗原さんがかぶっていたのと同じ青い帽子、青いメガホン、青いレプリカのユニフォームを揃いで着ている人の割合がすごい。
当然、隣の凛子も同様である。

プロ野球みたいだな、と付け焼き刃の知識でそんなことを感じた。

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