打って、守って、恋して。
試合はそのまま続いていき、日本は継投へ入る。
中継ぎを二人投入し、うまく九回まで二点のリードで持ちこたえて抑えに勝利を託した。
日本の抑えは関西のチームの選手で、かなり体格のいいピッチャー。身長は栗原さんと似たくらいかもしれないが、肩幅がものすごく広くて、いかにも剛速球を投げそうな感じ。
「今日勝ったら、次は決勝?」
「明日、決勝だってよ!テレビでやるの?」
「またBSで中継するだろ、きっと」
ごちゃごちゃと周りで明日のことを話している間に、チャイニーズタイペイの先頭打者が三振。
あと二人。
二つアウトをとれば勝てる。
勝てば、明日もテレビで試合を観戦できる、はず。淡口さんには許可とってないけど。
「明日は栗原くんは投げるのかなー」
もうなんだか眠そうな顔で、隣に座る沙夜さんが頬杖をついている。
「ネットで見たら、日本のエースって言われてましたよ!だからたぶん明日先発で出るはずです」
「日本のエース!?えぇ~、なんか想像つかない!」
「沙夜さんだけですよ、そんなの!やまぎんの試合とか見てたら、本当にすごい人だってよく分かりますから!」
「ノリのいい若者ってだけじゃないのかー」
ふと沙夜さんと栗原さんの間には、恋愛感情みたいなものは生まれてないのか気になった。
しかし、それはテレビから聞こえた打球音で思考が途絶える。
鋭い打球を放った相手チームの打者が、一塁ベースに余裕を持って到達したところが映し出されていた。
どうやらレフト前にヒットを打ったようだ。
『なかなかしぶといバッティングを見せましたね。ワンアウト一塁。ここで今日五打数二安打の四番に回ってきてしまいました』
『おそらくここは一発も狙ってくるはずですから、バッテリーは警戒しなければなりませんね』
ここでホームランでも打たれたら、一挙に二点入って同点だ。それは避けなければならない。