打って、守って、恋して。

テレビカメラがくるりと野手陣を一人一人短い時間ながらもひと通り映す。
二塁手の藤澤さんが画面に出てきた時は、ドキドキして呼吸が浅くなった。

真剣な顔で、右手につけたグローブをとんとんと左手で軽く叩いている姿が印象深い。
彼は野球をしている時が一番素敵で、一番輝いていた。


緊迫したこの空気感の中で、抑えを任されているピッチャーが深呼吸をするように肩を上げ下げする。
日の丸を背負うということは、きっと私たち一般人が考えているよりももっと重くて、とてつもないプレッシャーがのしかかっているはずなのだ。

その中で戦っている彼らは、本当にすごい。


一塁ランナーを気にしながら、ピッチャーが投げる。
打者は空振り。ヘルメットが落ちるほどの強烈なフルスイング。

怖くてじっくり見ていられない。
顔の前で手を組んで、ちらちらと戦況を見守る。


キャッチャーのサインに力強くうなずいたピッチャーは、セットポジションから二球目を投げた。

カン!という乾いた打球音。球場全体から歓声と悲鳴が上がる。

『二球目を振り抜いた!強く叩かれた打球が三遊間をすり抜けて…………いや、ショートがダイビングキャッチ!とった!素早く二塁へ送球!アウト!そのまま一塁へ送球!─────こちらもアウト!ダブルプレーでスリーアウト、試合終了です!』


こんな幕切れになるとは思っておらず、実況も興奮を隠しきれない様子で解説に話を振っていた。

『綺麗な643のダブルプレーでしたね!』

『ショートはよくあの打球を止めましたね。あの体勢からの送球はあまりよくありませんでしたけど、セカンドがうまくフォローして一塁に投げてくれました』

まだなにやら解説をしているけれど、うちの会社の事務所は全員で立ち上がってハイタッチしていた。

「やったー!日本が勝ったー!」

雰囲気に飲まれて、私もやったぁとハイタッチに参加する。ほぼ眠りかけていたはずの沙夜さんまでもが、何事もなかったように笑顔でみんなとタッチを繰り返していた。

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