打って、守って、恋して。

八回のウラ、日本は三者凡退。
九回の表、韓国は内野安打で一人ランナーは出たものの、得点には結びつかずにスリーアウト。


そして迎えた、最終回の日本の攻撃。
2対4で日本は負けている。

雰囲気としては、もう韓国の優勝が決まったようなもの。
球場の韓国の応援団が、大きな声援と拍手をもって選手たちを労っている。ここを抑えれば優勝だぞ、と言わんばかりに。


六番打者から始まるこの回。
当たっているクリーンナップが前の回で三者凡退にとられている上に、韓国は今大会でランナーを一人も許すことなく抑えてきた守護神の登場である。

この上ない優勝へのシチュエーションに、日本側のテンションも下がり気味だ。

「こりゃあ打順的にも期待できないな…」

「日本もよくここまで頑張ったよ」

事務所内でも、もはや諦めに近い労いの言葉まで飛び出している始末だ。


「ねぇ、こういう時って逆転できたりするものなの?」

素朴な質問を、いまだ涙ぐんでいる沙夜さんが私にしてくるものの、必ずこうだという答えが返せないから難しい。

「相手のピッチャーが調子悪かったり、こちらの打線の調子がよければ逆転も可能ですけど……。どうなんでしょうね?」

「栗原くん、あんなに頑張ったのに負けちゃうの?」

「……信じましょう!祈るしかないです!」

ちょうど画面には日本ベンチの様子が映されており、タオルを首にかけて右肩をアイシングしている栗原さんが映った。
先ほどよりすっきりとした顔はしているが、戦況を見守るその目は厳しさも残っている。

帽子はかぶっておらず、汗で湿った髪の毛が彼の疲れを表しているようだった。

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