打って、守って、恋して。
そうしている間にも六番打者は三振にとられ、七番のバッターが打席に立つ。
彼は初球を叩きつけるように打ち抜き、打球はグラウンドを高くバウンドした。そのバウンドに合わせてショートがとろうとしたが、イレギュラーしてとり損ねる。
「おお!やった!」
相手のエラーを呼び込んで、ワンアウト一塁。
続いて八番打者がバッターボックスへ入り、構える。
さすがにここで犠牲バントは考えにくい。この点差だと一点をとったところで勝ち負けが変わるわけではないので、おそらく強行だろう。
『今、バッターがおそらくバットの持ち方を変えましたね。バットを短く持ち始めました。球速に追いつけないので、ヘッドスピードを上げてコンパクトにスィングする狙いでしょうか』
『たしかにピッチャーは手元で伸びるいい球を投げていますから、表示されている球速以上にバッターは速く感じているのではないかと思います』
『彼は韓国のチームでもほとんど失敗なしという、すごいピッチャーです。調子の波が少ないのが特徴ですね』
実況や解説が言う通り、相手ピッチャーはランナーが出ていてもあまり気にした様子もなく目の前のバッターと勝負している。
牽制球も投げずに、どんどんキャッチャーミットへ投げ込んでいく。
おかげで、一塁ランナーがあっさりと二塁を盗むことができた。
長打さえ出れば一点は返せそうだ。
ワンボールツーストライクでバッテリー有利のカウントになった時、ピッチャーが投げた何球目かがキャッチャーミットを弾いて後逸した。
『おっと!パスボールです!ファウルゾーンへボールが転がっていきます!その間に二塁ランナーは三塁へ!』
しかし、ここで一本打つことができずに打者は三振になってしまった。
ツーアウト三塁。
まだチャンスは続いているといえば続いている。