打って、守って、恋して。
「石森さん、もしかして天然ですか?だとしたら俺はもうずっとあなたに振り回されてます」
「天然!?言われたことないです!」
「いや、天然です」
あざといみたいで天然は嫌だ!という妙なこだわりで、私はブンブンと首を振る。
「ファンだと言ってみたり、もっと会って話したいと言ってみたり、一線を越えさせない空気をいつも出してきたじゃないですか」
あからさまに不機嫌そうに責める藤澤さんを、初めて見た。
そして彼に言われるまで、自分のやってきたことがどれだけ曖昧なものだったのか気づきもしていなかった。
もはや絶句して言葉も出ない私に、彼は続ける。
「会うたびいいなって思っても、結局俺だけ。ふわふわして手応えもなくて、つかめそうでつかめない」
「そ、そんなこと」
「そういうつもりじゃないなら、どうしていいか分からな……」
とにかく止めたくて、必死に彼のシャツの裾を引っ張った。
同時に彼は何も言わなくなり、沈黙が訪れる。
「だって、だって…」と振り絞るように声を上げた。
「遠いんだもん!会うたび私だって好きだって思ったけど、あまりにも状況が違いすぎるから!ただのOLと藤澤さんみたいなすごい人が、そうなっていいのか考えちゃって」
「誰が決めたの、それ」
「誰って……」
私、だけど……。