打って、守って、恋して。
「知り合って、連絡を取り合って、デートする。その過程が面倒で、たいてい恋愛は後回し。でもちゃんと今回は俺からいつも連絡してたでしょ?」
どれだけ頑張ったと思ってるの?とでも言いたげな口調で拗ねているので、少し申し訳ない気持ちになる。
別に私も恋愛経験豊富ってわけでもないから確証を持って発言したのではない。ただ、本当に素直に、彼が私に触れる手が熱くて甘くて、これまで付き合ってきた人にもそうだったのかと思ったら嫉妬しただけ。
「そもそも栗原がきっかけを作ってくれたようなものだったから。あいつ相田さんを熱心に口説いてて…」
「えっ!やっぱりそうなんだ!沙夜さんのこと…」
思いがけない話をされて両手で口を覆って感動していたら、違う、と彼は首を振った。
「少し前に振られたって言ってた」
……振られた?栗原さんが?沙夜さんに?
「なんでそういう肝心な話はしてくれないんだろう!明日会社で聞かなくちゃ!」
他人にはズケズケと言いたいことを言ってくるわりに、秘密主義な先輩。
あの栗原さんを断ったなんて、どんなことがあっても凛子には言ってはいけない。
「どうして女性はそうやって自分の恋愛をあけすけに話すの?理解できないよ」
「あぁ……どうしてなのかな」
言われて初めて気づく、ガールズトークの謎。
「とりあえず、俺だってこう見えて一応緊張しているので。そこは分かってほしいなあと」
彼の額がとんと私の額と合わさり、目の前が暗くなった。そのあまり器用ではない照れ隠しが、この瞬間はいとおしい。
「じゃあ、試合とどっちが緊張する?」
「比べものにならない」
「やっぱり、そうだよね…」
「断然、今の方が勝ち」
えっ、と聞き返そうとしたところを容赦なく遮られ、揺さぶるようなキスを落とされた。