打って、守って、恋して。
こうして見ると、やはり右利きの他の二人の野手は送球がスムーズだなと感じる。
ゴロやフライをとってからの動きに無駄はないし、足さばきも気にならない。
旭くんは左利きだからその点では捕球から送球への動きの間に、足を一度踏み直さなければいけない。普通ならそのせいでワンテンポ遅れてしまうはずなのだが、まったく遅さを感じない。というか、むしろ二人よりも断然速い。
素人目でも分かるのだから、よっぽど速いのだと思う。
学生時代におじいちゃんの家の庭で繰り返し練習したという、捕球から送球までの動き。それは今の彼の原点なのだ、おそらく。
不利な左利きだとしても起用してもらえるように、右利きの人よりももっと速くできるように練習した賜物。
何度見ても、見とれるほど綺麗で滑らかな姿だ。
こうして見ていると、守備練習も打撃練習も、地道な努力の積み重ねなんだと思い知らされる。どのスポーツにも言えるのだろうが、基礎ができていなければ本番ではなにも通用しない。
試合は緊張するけれど、緊張しないくらい練習をすると彼は話していた。
それはきっと、この日々の練習によって自信に繋がっていくのだ。
時には滑り込んだり、倒れ込みながらも打球を受け続ける彼の姿を、私はいつまでも見ていた。
ずっと、ずっと。