打って、守って、恋して。

もう日がすっかり暮れた頃、選手たちがこれまで使っていたグラウンドを整備し始めた。
どうやら屋外での練習は終わりのようだ。
室内練習場もあるようだから、そちらへ移動したりするのだろうか。

周りで見学していた人たちも帰り支度を始めている。

暗くなったグラウンドに一瞥してから、私もみんなに紛れてあとにした。


帰りのバスの時間を調べてなかったことに気づいて、停留所で何時に来るのか確認すると、なんとあと三十分は来ないようだ。
時間を潰そうにも周りにはコンビニやカフェなどのお店もないので、ここで待ち続けるしかない。

自販機でもないかとキョロキョロしていたら、一台の黒いセダンが私のいる停留所のそばで停まった。

少し驚いたけれど、見覚えのあるその車の運転席をほぼ確信的に見つめてしまった。


「柑奈、どうしてここに!?」

びっくりしていたのは、旭くんの方だった。
何かの間違いじゃないかと思ったようで、わざわざ確認するために車を降りてきた。

「ごめん。じつは今日、急きょ仕事が休みになったから見学に来ちゃった」

「もしかして、この前の日曜出勤の代休?」

「うん、そう」

デートの約束をしていたのに仕事になってしまったから、彼の中でもすぐに結びついたらしい。
なんだそうなのか、と息をついた。
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