打って、守って、恋して。
彼曰く、東京で行われるプロ野球のドラフト会議で栗原さんが指名されたら、その時の彼の姿や簡単なインタビューを中継することになったらしいのだ。
地元の情報番組なので全国区には流れないが、道民はみんな見れる。
ますます栗原さんの人気が高まりそう。
「そっか、その打ち合わせで今日は練習が早く終わったんだ」
「行内だと狭いから、このままいけば練習場から中継になると思う。取締役なんかも来るんじゃないかな」
「まさに期待の星だね。…………あっ、ねぇ、もしかして」
一瞬、頭に思い浮かんだひとつの可能性を口にする。
「その中継の時、旭くんも練習場にいるの?テレビに映るかな?」
「そりゃあ野球部員だからその場にはいるけど…。その他大勢だよ、俺は」
「一応、録画しておこうかな!チラッとでも映ったら嬉しいじゃない」
「そういうの俺は嫌いなの知ってるくせに」
心底嫌そうな顔をした彼に、私は好きなの、と口をとがらせて対抗した。
目立ちたくない彼のことだから、きっとカメラに映らないように逃げそうだけど。
いそいそとドラフト会議の日にちを携帯で調べる私に、ぼそりと旭くんがつぶやく。
「栗原と野球ができるのも日本選手権で終わりか…」
「……そうだね。どこに行くことになるのかな、栗原さん。………チームメイトがプロに行くのは、悔しい?」
「ううん。寂しい、かな」