打って、守って、恋して。
私はさっきから妙に緊張してしまって、あまりしゃべる気になれず黙っていた。
ドラフト会議の中継を見たいと言い出したのは他でもない私。
それでも旭くんの後輩であり、私たちが付き合うきっかけをくれた栗原さんが、ちゃんとプロに行けるのかどうかという大事なところだからこそ、緊張せずにはいられなかった。
テレビから男性のアナウンスが流れる。
『それでは、これよりドラフト会議を開催致します。今から各球団ごとに一巡目に指名する選手名を発表して参ります』
ざわついていた会場がピタリと静かになった。
テレビ画面に食い入るように、祈りを込めて集中する。
球団ごとに一人ずつ、選手の名前が呼ばれるようだ。
まずは、一球団目。
『第一巡選択希望選手、町田拓海外野手、松川商業高校』
……違う。
二球団目。
『第一巡選択希望選手、但木洋投手、高城大学』
少し会場がどよめいた。
……違う。
三球団目。
『第一巡選択希望選手、滑川昴外野手、上杉高校』
……違う。
十二ある球団のうち三球団が栗原さんの名前を呼ばない。
一抹の不安が頭をかけめぐる。
まさか本当に彼の名前が呼ばれないことなんて、ある?
四球団目。
『第一巡選択希望選手、但木洋投手、高城大学』
また会場がどよめく。彼は二球団に指名された。
……まだ栗原さんが呼ばれない。
じっとしていられなくて手足をこそこそと動かしていたら、淡口さんが柑奈ちゃん、と呼ぶ。
「ドラフトはなにも一巡目だけで終わるわけじゃない。六巡目、七巡目まで続くはずだ。それまでに呼ばれればいいんだから、一巡目にこだわることはないんだよ」
「そうですけど、でも」
早めに呼ばれてこちらも安心したい。
……というのは、あくまで素人考えなのだろう。