打って、守って、恋して。
画面の中では五人の男性が合図を受けて同時にくじの中身を確認する。
少しの時間をあけて、左端の男性が笑顔になって右の拳を突き上げた。同時に歓声が上がる。
『栗原和義の交渉権を当てたのは……地元の球団のようですね!北海道の球団が当てました!関係者は満面の笑みです!』
「栗原が地元に残るぞー!」
翔くんが嬉しそうに立ち上がる。
四人でやったね、やったね、と繰り返してまた抱き合った。
そこで気づいたらしい、沙夜さんの存在に。
「……あれ、相田さんいつの間に!」
「いいじゃない、別に」
「そりゃ気になりますよねぇ」
もしかしたら翔くんは沙夜さんが振られたとでも思っているのか、とっても気まずそうに微妙な笑みを浮かべている。
テレビは三画面中継に切り替わり、先程の情報番組のMC、栗原さんが耳にイヤホンのようなものを当ててキョロキョロしている姿、そして小さくドラフト会議の中継もそのまま流していた。
MCの二人は笑顔で「栗原選手、おめでとうございます!!」と大きな拍手を送っている。
『ありがとうございます』
栗原さんは照れたような笑顔で画面に向かって頭を下げていた。
栗原さんの隣には、たぶんやまぎんのお偉いさんなのだろう年配の男性が彼を挟むようにして座っているが、彼らも笑顔である。
『どうですか、地元球団に引き当ててもらえた時の心境は!?』
『いえ、その前に本当に指名されるのか不安でした』
『最終的に五球団競合ですよ!素晴らしいですね!』
『皆さんに応援していただいたおかげです。本当にありがとうございます』
中継でインタビューを続けるMCの二人も、まだなんだか落ち着かない様子で『僕らもドキドキしていましたよ』などと話していた。
『指名を受けた直後はどうでしたか?』
『チームメイトと一緒に喜んでました』
『あっ、チームメイトの皆さんもそちらにいらっしゃるんですね!』