打って、守って、恋して。

『自己PRと目標をお願いします』

─────守備しか自慢できるものはありませんが、なるべくダイビングキャッチはしないように打球を先読みしていきたいです。目標は……一軍の試合に出場すること、です。

……大丈夫?ダイビングキャッチしてる選手、きっといっぱいいるよ?ケンカ売ってない?


『特技や趣味はありますか?』

─────雪国出身なので、ウィンタースポーツは全般人並み以上にできます。趣味は釣りです。

……ウィンタースポーツ、できるんだ。知らなかった。


『みなさん独身なのでこれから寮生活になると思いますが、絶対にこれは寮に持ち込みたい!と思っているものはありますか?』

─────冷蔵庫と電子レンジです。

……それ、人は生活必需品と呼びます。


『好きな食べ物なんかはありますか?』

─────和栗のモンブランパフェです。

……あのパフェ、よっぽど美味しかったんだね。


『毎日やっているルーティンは何かありますか?』

─────特にないです。

……一番だめなやつ!



『最後に、藤澤選手にお聞きします』

突然、名指しで呼ばれてビクッと肩を震わせた旭くんは、怯えた目で進行役を見つめる。

『入団選手の中で一番年上ですね。ほかのみなさんとどう接していきますか?なにかアドバイスなどありますか?』

ごくり、と彼が息を飲んだのがよく見えた。
少し時間をおいたあと、テーブルに置いてあるマイクをとってぼそぼそと答える。

『アドバイスなんて何も……。むしろ、体力面で自信がないので練習で足を引っ張らないように頑張ります』



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