打って、守って、恋して。
だって、だって、だって。
今日は特別な日。
リーグが違うから旭くんと栗原さんが直接対決する場面なんて、日本シリーズくらいしかないのだと思い込んでいたけれど、少し前から両リーグが一ヶ月弱戦う交流戦というものがあるということを、ついこの間知った。
プライベートではあんなに仲の良かったあの二人が、今では別なチームに所属するいわば“敵”になっていることが信じられない。
どうなるのだろう、というドキドキ感をなんとかおさえながら家のテレビ画面を見つめた。
画面には、もうすでにいつもの癖である左腕をぐるぐる回しながらバッターボックスに入った旭くんの姿が映し出されている。
黒いヘルメットをかぶり、左打席に立ってバットを緩く持っていた。
マウンドで栗原さんがロージンバッグを右手でポンポンと跳ねさせたあとぽとりと落として、今度はキャッチャーのサインを目を細めてうかがう。
旭くんは今度こそしっかりとバットを握り、そして強い目つきでマウンドに視線を向けた。
同様に、栗原さんも緊張感のある表情で先を見据えている。
─────これっぽっちも手を抜かない、完全な真剣勝負だ。
家の中なのに、正座してじっと二人の対決を見守るしかできない。