打って、守って、恋して。
④試合観戦には出会いあり
スポーツ観戦というものは、人それぞれ個性が出る。
応援の仕方は様々であり、ただ黙々となにもしゃべらずじぃっと戦況を見守るタイプ、家族や友達と楽しく会話しながらメガホンをうち鳴らすタイプ、もはやお酒ばかり飲んで試合なんか全然見ないタイプ、とにかく、十人十色。
私が東京へ出向いて旭くんの試合を観戦する時は、間違いなく一人だ。
最初は孤独だった。
何をすればいいのかも分からないし、球団ごとに違う応援スタイルに慣れるのも大変だったし、一人で売り子さんに「ビ、ビールひとつ」と頼むのも恥ずかしかった。
しかし、慣れというのは怖い。
もう今の私は無敵だ。
やまぎんの試合を見に行っていた頃は凛子が隣にいなければなにもできなかったが、今の私は完全にオヤジ化していた。
「あー、惜しい…」
内野席で地味〜にレプリカのユニフォームを着て応援していた私は、三塁手が飛び込んだその少し先を打球が転がっていったのを見て独りごちていた。
神宮球場だから、旭くんの球団の本拠地となる。
土曜日だからか、観客の入りも多くて満席に近い。私のようにチームのユニフォームを着たり、帽子をかぶったりとグッズを身につけている人がとても多かった。
デーゲームならば夏の日差しが直に当たってつらいところなのだが、それを想定して土日はナイターにしてくれているのがありがたい。
北海道に比べたら死ぬほど熱い気温ではあるものの、日差しがないだけでも助かる。そして、ビールがすすむ。
すっかりひとり観戦に慣れた私は、ビールをこくこく飲みながら時々双眼鏡で旭くんをのぞいたり、ひとりごとをつぶやいて過ごしていた。