打って、守って、恋して。

いてもたってもいられなくなり、つい彼女たちの会話に口を挟んだ。
びっくりして彼女が双眼鏡を外して私をまん丸の目で見つめ返してきた。

「帽子をかぶっていてもいなくても普通ですし、見た目に関しては間違いなく地味のプロですけど。その一言で片づけられない魅力が旭くんにはありますよ!野球に対する熱意は誰にも負けませんし、セカンドへのこだわりだって本当にすごいんです!プライド持ってやってます!左利きだけど、ハンデなんかないように思わせるためにどれだけ努力してきたか!きっと来る日も来る日も練習してきたんだと思います!努力の人なんです!努力の天才なんです!ただ普通で地味ってだけで終わらせちゃいけない人なんです!ちなみに旭くんは全然ハゲてません!!」

いつの間にか、距離まで詰めて息継ぎもせずに矢継ぎ早に言葉をかけ続けてしまっていた。
ハッと我に返ったときにはもうすでに彼は引いていて、彼女も圧倒されて唖然とした表情でのけぞっている。

……ヤバい!どうしよう!


「ご、ごめんなさ……」

「わかります~~~!!」

「─────え?」

私の謝罪にかぶせて彼女がキラキラした目で笑った。

「地味な外見の内側にある熱意! プライド! 努力! すっっっごい素敵ですよね! あー、うなずきすぎて首痛い。私なんて地味な顔にときめきすぎて、最近ではイケメンが何かわからなくなってきました!勝ってもかっこいい。負けてもかっこいい。心臓の休みどころがないんですよね! わかる、わかる!!」

絶対に引かれたと思ったのに、引いたのは彼だけで彼女は激しく共感している。なぜなのかは分からないが、潤んだ瞳で私と顔を合わせて、まるで「同じですね!」と語りかけてくるみたい。

そしてすっと私の手をとると、彼女は力強くうなずいた。

「私もあのイケメンショートよりは断然57番です!」

「…………だから、藤澤だって」

彼は繰り返し名前を教えていたけれど、彼女は覚える気がないのか耳をそばだてる振りをしたり、笑い飛ばしたりとあまり聞いていなかった。


その後、試合が進んでいくにつれて私たちは仲良くなっていき、最終的にあの元気な彼女にこう言われた。

「試合が終わったあと、一緒に飲みに行きませんか?」


少し迷った。
今日会ったばかりの人たちと…って大丈夫かな、と。
でもこういうのも試合観戦の醍醐味かもしれない。
それに、面白いひとつのアイデアが思い浮かんだ。

「行きます!……その代わり、あとで人と会う約束してるんです。その人も一緒にいいですか?」







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